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雨飾山~焼山縦走・下

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(承前)
焼山と火打山を源流とする早川谷に伝わる 「往古早川谷之絵図」によればその昔
焼山は茶臼山と呼ばれていたという だが康安元年(1361)の噴火のおり
茶臼のような溶岩ドームが崩落し それから焼山と呼ばれるようになった
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(この日(2023/8/8)焼山から姫川は見えるも早川は雲でよく見えず)
また同絵図によれば焼山の隣の火打山は 八口山と呼ばれ山中にいた
八口という者を出雲の大穴持命(大国主神)が討った これは「出雲国風土記」の記述に基づく伝承だ
八口(やつくち)とは「古事記」で須佐之男命(スサノヲノミコト)が出雲で 退治した高志(こし)の八頭八尾の八俣大蛇(やまたのをろち)の後裔か
縄文・弥生の昔から越後の西頸城や隣の 越中の宮崎・境はヒスイの産地として知られていた
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(2023/8/9)
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(現在の越後・越中国境が定められたのは大宝二年(702)。大宝二年に国境鎮護のため祀られた脇子八幡宮、2023/8/9参拝時)
資源を求め出雲の勢力が遠征してもおかしくはない 大和王権も古墳時代前期には
崇神天皇十年(四世紀初頭)に大彦命(おおびこのみこと)が北陸に遠征し(「日本書紀」) 久比岐国と高志深江国に逸早く国造(くにのみやつこ)を設置した(「国造本紀」)
「越後国風土記」の逸文によるとその頃 越の国に八掬脛(やつかはぎ)という強大な敵がいたそうだ
大和王権にまつろわなかった八掬脛は 出雲にまつろわなかった八口(やつくち)を思わせる
彼らは出雲や大和の王権に 従わなかった越の独立勢力だったのだろう
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(早川河口より望む焼山、2023/5/30)

大彦命に続き景行天皇四十二年頃(四世紀中葉) 日本武尊(ヤマトタケルノミコト)東征の帰路に吉備武彦命(きびのたけひこのみこと)が
分遣隊を率いて越に遠征した(「日本書紀」) 「越佐史談」(和田悌四郎、明治三十年(1897))によれば武彦命は
この遠征で早川を通っている 古くから出雲や大和の文化も伝わっていたこの地に
早川谷の東に聳える鉾ヶ岳の 祭神は佐多神即ち出雲の佐太大神(さだのおおかみ)
大穴牟遲神(大国主神)を救った𧏛貝比賣(きさがいひめ)の子だ 鉾ヶ岳の名は大国主神の異名・八千矛神(やちほこのかみ)も思わせる
八千矛神は高志の沼河比賣(ぬなかわひめ)を娶る際 駒ヶ岳で地元の神と競馬し勝ったという(「西頸城郡誌」)
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(早川の越橋より望む鉾ヶ岳、2023/5/30)
焼山のザレ場を西へ下りつつ これから歩いてゆく尾根を一望
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金山(かなやま)を越えて下り雨飾山の 尾根に出て鋸岳との鞍部から向こうへ降る
この長い道のりを急ぐ野人めを アオジの雌が見送っていた
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山道彩るミョウコウトリカブト カライトソウやニッコウキスゲ
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ハクサンフウロにコオニユリ 焼山も火打山も頭に雲を被った
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十五時に金山に戻り 雨飾山を見おろしつつ降っていった
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駈けるように颯爽と急降下 するもあまりに長い坂に
へとへとになってペースダウン どれだけかかるのだろうこの先
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とにかく足を進めるしかない 道はやがて登り坂となり
十七時すぎに雨飾山北尾根に出て 下っていった雨飾山を背に
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足元に咲くタカネナデシコ 駒ヶ岳の裾越しに夕日に輝く根知川
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鋸岳との鞍部への下りは急峻な斜面 梯子(はしご)とロープの連続だ
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絶壁を横這いして梯子を乗り換え 降りると見事な柱状節理の岩壁
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十八時半前にようやく鞍部に着き 降りていった西側に
沢の清水で汗流し喉を潤し 暗い山道をゆくヘッドランプ点けて
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黒姫山と能登の彼方に沈む夕日 道はあまり歩きやすくはないが一ヶ月前
駒ヶ岳~鬼ヶ面山~鋸岳縦走の際に 歩いた道なので暗くなっても分かる
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十九時半雨飾山荘前に無事に降り 北に黒々とした鬼ヶ面山を見上げた
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松尾如秋

Author:松尾如秋
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、森羅万象を統べているものとの一対一の対話
白山と、白山に育まれているすべてのものへの讃歌
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝