FC2ブログ

記事一覧

白山加賀禅定道登拝~衆華争開・後

(承前)
 人の多い室堂へは下らず、誰もいない平瀬道へ。山道を外れて叢を進み、御厨池(みくりやのいけ)に参拝。
20200721181032764.jpg
藪に囲まれた神秘的な池の畔に咲く、キヌガサソウやサンカヨウ。
20200721181033347.jpg
「大法師浄蔵伝」に記される、白山の故老の言い伝えによれば、神融という苦行人が景雲年中に白山を始めて開かれ、法華経の功力で毒龍悪鬼を御厨という池に籠めた、とのこと。神融とは、泰澄和尚の別号です。御厨池については、当ブログで再三紹介してきました。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2015年10月30日「大白川より白山登拝」
2017年11月4日「白水滝~白山登拝」
2018年4月18日「翠ヶ池・千蛇ヶ池・御厨池」

池畔にて観音経(法華経観世音菩薩普門品)を読誦し、泰澄大師、および、天慶2年(939)にこの池の水を酌んだ浄蔵法師、天喜年中(1053~59)に水を酌んだ日泰(日台)上人、十二世紀に水を酌んだ末代上人(富士上人)を偲びました。「大法師浄蔵伝」の故老の伝によると、泰澄大師が初めて白山を開かれたのは慶雲年中(704~707)らしいのですが、このことは、「続日本紀」慶雲3年(706)八月の条に

「越前国言。山災不止。」

とあり、さらに

「是年、天下諸国疫疾。百姓多死。」

とあることを思い合わせると、首肯(うなず)けます。越前国の山災が白山の噴火のことなのかは断定できませんが、八世紀当時の越前国には加賀も含まれていました。「越の大徳」と呼ばれていた泰澄大師が越の国の天災や疫病を収束させるため、白山に登って御厨池で修行をされたとしても、おかしくはありません。「山災」が白山の火山活動であったとすれば火口付近に近寄れるはずもなく、火口池ではない御厨池におられたというのは、ますます妥当なことと思われます。
 泰澄大師が白山を開かれた年は、越前側の「泰澄和尚伝記」には養老元年(717)、加賀側の「白山之記」には養老3年(719)と記されていますが、白山に一度や二度登ったくらいで白山のことが分かるなどとは、到底思えません。慶雲年中から白山で約十年の修行の後、養老年中についに白山三所権現を開かれた、これが真実に近いのではないでしょうか。
 ハイマツに囲まれひっそりと佇む、御厨池。
20200721181033232.jpg
時折聞こえる、ウグイスの題目。私が死んだら、極楽よりも黄泉よりも、此処に来たい。秘窟を出入りし、池の上から御前峰を拝み、白山の生きとし生けるものたちをそっと見守りたい。
202007211810346c0.jpg
 11時に池を発ち、室堂方面へ。来たときとはうって変わって、濃い霧雨。
2020072118103646c.jpg
御前峰と大汝峰の山腹をトラバースし、12時半前に御手水鉢へ。
2020072118140285d.jpg
下ってゆけば霧は晴れるかも、と期待したものの、霧雨は一向に止みはしませんでした。四塚山からの下りに出会った巨大ナメクジ。
20200721181404409.jpg
13時半すぎ、油池。14時すぎ、天池。
20200721181405208.jpg
下ってゆくほどに、霧雨は小雨に、小雨は雨に。山道は樹々に覆われているので助かります。16時半、檜新宮に参拝。
20200721181406792.jpg
ぬかるむ山道を一心に下ってゆきながらも、星を散りばめたような小花に無数の水滴を輝かせるヤマアジサイの麗しさに、思わず足が止まりました。
20200721181408ce2.jpg
AMラジオに雷の雑音はなく、落雷の心配はありませんが、野人としてもかなりのハイペースで降下。左胸が痛みだし、歩きながら観音さまのお姿念じてみたものの変わりなし。そこで老子爺さんのお姿を思い描くと、「老子道徳経」の中にある言葉が胸に浮かんだのでした。

「人は常々、成功を目前に失敗しがちだ。
初心を忘れず終わりを慎めば、
失敗することはないだろう。」
(「老子」第六十四章、拙訳)

此処まで無事に戻れたのだ、最後は慌てず慎重に行こう。救いとは、キラキラした姿や言葉、ピカピカした霊験や予言などにあるのではなく、素朴で当たり前な自然の道理に復(かえ)るところにこそあるのでした。
 17時半すぎ、無事にハライ谷登山口に下山。しっとりとした霧のヴェールの中で、様々な花や生きものたちと触れあうことのできた山行でした。

関連記事

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

白山順禮写真館

Haxanjunrei

松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝