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白山鳩居峯中四宿巡拝~帰山再会

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 5月30日、四ヶ月ぶりに白山美濃馬場・白山中宮長瀧寺へ。新型コロナウイルスの影響もあり、毎月続けてきたこの行もしばらくご無沙汰しておりました。旧暦6月1日は、約五百年前の大永・享禄の頃(1521~30)に亡くなった長瀧寺の敬愚比丘のご命日。入峯前に敬愚比丘が焼身供養を行じられた御坊主ヶ洞に登り、「法華経」薬王菩薩本事品を読誦しました。
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敬愚比丘は一切衆生喜見菩薩(薬王菩薩の前世)のように、身をもってみ仏とその教えを供養されたのでした。私も身をもって白山妙理大権現と敬愚比丘を供養すべく、藪も雪も深い長瀧寺の古の山伏の行場「鳩居峯」の巡拝を続けてまいります。
 拝殿・豪潮律師宝篋印塔・大講堂に参拝して入峯。
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四十分ほどで一ノ宿に参拝し本地・不動明王を供養。
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谷にこだます蛙の声。時折ホトトギスの声も聞こえます。尾根を登ってゆくと、足元にギンリョウソウ。
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もう、そんな季節なのだなぁ・・・今年の春は、あっという間にすぎてしまいました。
 樹間に拝む、残雪の白山。
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越美国境尾根に出ると、黒いアゲハチョウが舞っていました。二ノ宿へと縦走、藪中に成る赤い実。
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山の生きものたちに与えられた恵み。人間は山にお邪魔しているにすぎません。「鳩居鵲巣」とは、鳩が鵲(かささぎ)の巣を借りること。古の長瀧寺の「鳩居行者」は、けっして我が物顔で山を荒らしたりなぞしなかったでしょう。二ノ宿への下り、白山三所権現を遥拝(巻頭写真)。別山(本地・聖観音菩薩)と御前峰(本地・十一面観音菩薩)、奥に大汝峰(本地・阿弥陀如来)。
 入峯から約二時間、二ノ宿付近で本地・釈迦如来を供養。二ノ宿の跡は見つかっておらず、私は大日ヶ岳の見える鞍部でいつも勤行しています。さわやかな風。さらに縦走してゆくと、尾根の北側に一段低い平地があり、樹間に白山が拝めます。
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私はこの辺りが二ノ宿の行場だったのではないかと感じています。
 三ノ宿への登り、涸れることのない谷の源。
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冷たく清らかなこの水で汗を流し喉を潤すと、身も心も癒されます。

「谷の神は死ぬことがない、これを幽玄なる母性という。幽玄なる母性の門、これを天地の根源という。」(「老子」第六章、拙訳)

 入峯から約三時間、三ノ宿三角点に登頂し、北の毘沙門岳の背後に白山三所権現を遥拝。
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別山(聖観音さま)と御前峰(十一面観音さま)の中央奥に大汝峰(阿弥陀さま)が頭を覗かせる、山越来迎阿弥陀三尊。三ノ宿の本地は阿弥陀さま。保安2年(1121)に白山加賀馬場・笥笠中宮(けがさのちゅうぐう)で念仏三昧を行じられた西因上人の願文と念仏をお唱えし、敬愚比丘と、新型コロナウイルスで亡くなられた方々に手向けました。三ノ宿から北に少し下った藪中にある、塚のように見える処。
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尾根の下りは、山仕事の人たちが藪を刈ったようで、かえって足の踏み場がなく歩きにくいです。ふと、目の前に現われたカモシカの白骨。
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兄弟なるカモシカさんに念仏をお称えしつつ、白山権現が「お前もやがてこうなるのだよ」と諭してくださっているのを感じました。

「森々たる霊木離々たる異草、みなこれ我王子眷属の所居也。十方法界皆我神躰にあらすという事なく、世界衆生みな吾うみなせる子なり。我な穢しそ穢しそ」(「大永神書」、白山権現のご神託)

 新型コロナウイルスによる「自粛生活」中は、散歩して近所の標高百メートルそこそこの山に登る程度。久々の千三百メートル級の藪山の縦走、日差しも暑く、さすがに疲れます。鞍部に降り、ウグイスの声聞きつつ西山へ。喰わず・座らず・撮らずをモットーに始めたこの行、「撮らず」は最近守ったり守れなかったりですが、あとの二つは守ってきました。しかし、自粛明けの今回は何年かぶりに腰を下ろして休憩。「喰わず」は、喰い物ないので守れます。トイレなどない山中で脱糞したくはありません。山では腹も減らぬもの、メシは下山してから喰えばヨロシイ。水さえあれば、野人は数日は生きてゆけます。
 西山手前のピークより拝んだ白山。
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山頂部の二~三メートルある厳しい笹藪へ、マスクと眼鏡ストラップ着けて突入。こんな藪山には人は来ないのでコロナウイルスもいませんが、ススだらけの太くて高い笹藪を漕ぐと鼻の穴は真っ黒け、喉はイガイガになるので、マスクは欠かせません。入峯から五時間半弱、西山登頂。
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ハエがブンブンたかってきます。西山からの足の踏み場もない藪の下り、笹越しに拝んだ白山三所権現。
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西山から拝む白山は、別山(聖観音さま)と御前峰(十一面観音さま)のちょうど中央奥に大汝峰(阿弥陀さま)が頭を出す、均整のとれた三尊のお姿です。藪を必死に漕いでいるうちに、谷へと下ってしまいがちな処を塞ぐかのように倒れた大木。
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2018年9月の台風21号によるものです。多和ノ宿に降りましたが、三ノ宿の沢で汲んだ水も尽き、多和ノ宿より下の沢の清流で汗を流し喉を潤しました。
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流水の有難さは、新型コロナウイルスの流行でも実感させられたところ。多和ノ宿に戻って勤行を修し、本地・毘沙門天王を供養。
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今冬は雪が少なかったためか、多和ノ宿跡もだいぶ藪が茂ってきました。
 疲れもあり、今日は毘沙門岳へは登らず蓮原川に下ろうかとも思いましたが、雲が出て日差しも和らいだので、水のない毘沙門谷を上へ。やがて笹藪地獄に突入。
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稜線に出ると、相変わらず白山は見守ってくださっていました。
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入峯から八時間弱、毘沙門岳登頂。南に歩いてきた三ノ宿と西山、その背後に高賀の山並と、滝波山・美濃平家岳・平家岳。
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此処から先は、いつもなら桧峠へ下って国坂宿に参拝し、古の禅定道を下ってゆくのですが、毘沙門岳から東の尾根を干田野へ下る方が距離は短く、久々に東尾根を下って毘沙門様に参詣しようと思いました。毘沙門岳東尾根を歩くのは、2016年9月以来です。
 山頂から少しだけ藪が刈られていましたが、すぐに藪に。笹藪のみならず、灌木・ツルと三拍子そろった藪・・・。
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毘沙門様が祀られるピークにつながる尾根は、一つ。しかし藪で見通しがきかず、途中から一つ下手の尾根へと下ってしまいました。気づいて山腹をトラバースし、上へ登り直したものの、すさまじい藪の登りは疲れ身にこたえます。藪中でシカの角に二度出会いました。
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北の樹間の白山は、雲に見え隠れしていました。
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 入峯から十一時間、登り直して正しい尾根らしき藪を下ってゆきましたが、登りすぎてしまったようで、今度は正しい尾根より上手の尾根・・・。今回は毘沙門様は諦め、谷へと下ってゆきました。入峯から十二時間、やっとありついた谷の水。
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沢に咲く紫色のヒメシャガに、白山三所権現を拝みました。
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谷を下って蓮原川に降りたものの、川沿いに林道が見当たらず、だいぶ上流に降りてしまったよう。ヘッドランプ点けて山腹を下流側へ徘徊、再び蓮原川に降り立ち、半月を見上げました。
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その後も夜の山腹の藪中を下流側へと進んでゆき、入峯から十四時間半、蓮原川を渡渉して無事に川沿いの林道へ。いつも長瀧寺の昔のことなど教えてくださる古老から、心配したのか着信があり、ご心配おかけしましたと電話しました。この行中は写真を撮らない時はケータイを置いていくことが多かったのですが、今回はケータイを持ってきて正解でした。
 帰宅後、下着のシャツを脱いだ際、背中にこびりついていた何かが取れたのを感じました。見ると、シャツにシュルツェマダニが付いており、刺された処は少し腫れていました。
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シャツの上から刺していたため、無事に取ることができたのでした。シュルツェマダニ君は今や、毎年この時期の馴染みです。彼らは暑さは苦手なようで、野人の場合、刺されても熱いシャワーをかけながらうまく取ることができます。
 久しぶりの鳩居入峯、厳しくやさしい白山権現、兄弟姉妹なるギンリョウソウ、カモシカ、ヒメシャガ、シュルツェマダニ、藪、沢、そして親愛なる古老に、私を再び迎えてくださったすべてのものに、感謝致します。

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Haxanjunrei

松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝