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パンデミック訳「老子」22 戦争×知足

 老子爺さんこう述べた。

「道をもって主君を補佐する者は、
武力で天下をほしいままにしようとはしない、
そのようなことをすればお返しがあるものだ。
軍隊の駐屯した所には、荊棘(いばら)が生えるもの、
よく補佐する者は目的を果たすと矛を収め、強がらない。
目的を果たして驕(おご)らず、目的を果たして誇らず、
目的を果たして高ぶらず、目的を果たしてやむなしとする、
これを目的を果たして強がらないという。
物事は盛んならば衰える、これを不道という。
不道なるものは早く亡ぶ。」
(「老子」第三十章)

軍隊の駐屯した所には荊棘が生えるのみならず、しばしば疫病も発生する。後漢末期の建安13年(208)7月、中国北部を平定した曹操は南征を開始、9月には逃げる劉備を当陽の長阪で追撃し、劉備はかろうじて夏口(武漢)へと落ち延びた。劉備は呉の孫権と手を結び、冬、劉備・孫権連合軍は長江を遡って赤壁で曹操の軍を撃破した。おりしも曹操の軍には疫病で多数の死者が出ており、曹操は撤退を余儀なくされたのだった。
 第一次世界大戦(1914~18)の最終年にはスペイン風邪が世界中で大流行し、数年にわたって多くの人々が亡くなった。太平洋戦争(1941~45)では連合国軍も日本軍もマラリアを始めとする感染症に苦しめられ、対策の遅れていた日本軍では多くの兵が感染し、亡くなった・・・。水木しげるさんもニューブリテン島(パプアニューギニア)でマラリアに度々倒れたという。

「武器とは、不吉なモノだ。
人はそれらを好まぬもの、だから道を行じる者は使わない。
君子は平時には左を貴(とうと)び、戦時には右を貴ぶ。
だから武器とは君子のモノではなく、武器とは不吉なモノなのだ。
やむを得ずこれらを使うならば、簡素をよしとし、飾り立てるな。
飾り立てれば、殺人を楽しむことになる。
殺人を楽しむ者には、天下を志すことなどできない。
だから吉事には左が尚(たっと)ばれ、凶事には右が尚ばれる。
だから副将軍は左に並び、大将軍は右に並ぶ、
つまり葬礼にならって並ぶのだ。
多くの人が殺される・・・、戦争には悲哀をもって臨め。
戦争に勝っても、葬礼にならって対処せよ。」
(「老子」第三十一章)

「天下が道にかなっていれば、
早馬は農村に退(の)いて田んぼを肥やす。
天下が道にかなっていなければ、
軍馬が辺境で子馬を産む。
多欲よりも大きな罪はなく、
足るを知らぬよりも大きな災いはなく、
欲得づくよりもひどい咎(とが)はない。
だから足るを知ることに満足するなら、
いつでも満ち足りていられるのだよ。」
(「老子」第四十六章)

第一次世界大戦終結後の1919年、ドイツの詩人、ヘルマン・ヘッセが匿名で発表した評論「ツァラツストラの再来」に、こうある。

「君たちは長い戦争の前には、富みすぎていた。おお友よ、君たちは、君たちと君たちの父は、富みすぎ、ふとりすぎ、満腹しすぎていた。君たちが腹に痛みを感じた時、それこそ君たちにとって、その痛みの中に運命を認識し、運命のよい声を聞くべき時であっただろう。だが、君たちは腹の痛みをおこさせるのは、飢えだ、欠乏だと、理屈をこねあげた。そして略奪するために、地上により多くの土地を得、腹の中により多くの食物を得るために、戦争を始めた。君たちの欲するものを獲得せずして帰還した今日、君たちはまた悲しみ嘆き、あらゆる種類の悲痛を感じ、苦痛の源である憎い憎い敵を捜し求め、それが君たちの兄弟であろうとかまわずに、射殺する気がまえでいる。」(高橋健二訳)

人は得てして、自分の苦しみを誰かのせいにしたがるもの。「アイツのせいで・・・・」「アイツさえいなければ・・・」「アイツらの物が手に入れば・・・」。今回の新型コロナウイルスのパンデミックでも、このような傾向は見られよう。だが、この苦しみの原因は自分たちの、とどまることを知らぬ欲望にあるのではないのか?天地自然の道と人間の営みの、不均衡にあるのではないのか?このパンデミックによって少しでも私が愚かになれたのなら、幸いである。そして人類も。

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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝