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パンデミック訳「老子」16 水は争わず

 老子爺さんこう述べた。

「最上の善は水のよう。
水はよくすべてのものに利益を与えて争わず、
人々の嫌がる所に身をおく、
だから道に近いのだ。
足は地につき、心は淵のように深く、人と接するに真心をもってし、
政情は安定し、事はうまくはこび、行動は時にかなっている。
争わないからこそ、恨まれることもない。」
(「老子」第八章)

人は水をめぐって争うこともある。だが、水はけっして利害を与える相手を選びなどしない。手を洗い、顔を洗い、口を嗽ぐ。喉を潤し、田畑を潤し、大地を潤し、生命を潤す。頭を洗い、体を洗い、足を洗い、心を洗う。すべて水のおかげ。人間の体の大部分は水だ。私たちの口や鼻から出る飛沫(しぶき)も、水だ。新型コロナウイルスは私たちの飛沫に乗って、人から人へと移ってゆく。飛沫を洗い流すのも、水。新型コロナウイルスの感染を防ぐ最上の善とは、清(す)んだ流水でしっかりと手洗い・うがいすることだろう。

「天下に水より柔弱なものはない、
しかし、頑強なものを攻めるのに水に勝るものがないのは、
綿々として易(か)わることがないからだ。
柔らかなものが頑丈なものに勝ち、
弱いものこそ強いものに勝つ、
天下にそれを知らない者はないが、
実行するのは難しい。
だから聖人はこういうのだ、
「国の恥辱を引き受ける、これぞ国家の主というもの。
国の災難引き受ける、これぞ天下の王というもの。」
正しい言葉は、ジョーシキとは逆だ。」
(「老子」第七十八章)

水は岩を削り、穿ち、転がし、流す。十万年前、現在の白山の北側に標高三千メートル以上の成層火山があったが、浸食されて今はその姿はない。岩にしみ込んだ水は、凍ると膨張する。雪深い山岳の浸食・崩壊のスピードは、速い。水は高く隆起した山岳を砕き、削り、下へ下へと流す。そして大地を潤し、生きとし生けるものを育む。

「大国とは大河の下流だ、天下の手弱女(たおやめ)だ。
天下の交わりには、手弱女がいつもその淑(しと)やかさで益荒男(ますらお)に勝る。
淑やかさで勝る、だからへり下った方がよい。
それ故、大国は小国にへり下ることで、小国を集める。
小国は大国にへり下ることで、大国に護(まも)られる。
あるいはへり下って集め、あるいはへり下って護られる。
大国は多くの人を養いたがるもの、
小国は庇護を受けたがるもの。
皆の望みをかなえんとなら、まず大国がへり下ることだ。」
(「老子」第六十一章)

大国が広々とした大河の下流なら、小国は支流の谷川。大河がへり下っていればこそ、そこに無数の谷川が流れ込む。無数の谷川のおかげで大河は大きく、大河のおかげで谷川は海とつながる。新型コロナウイルスのパンデミックで、大国の人々が受けたダメージは想像を絶する。しかし、大国のリーダーたちがこの現実と謙虚に向き合わず、責任をなすりつけ合うならば、誰にとっても何一つメリットはない。武漢からCOVID-19がどのようにして欧米に広まったのか、欧米からどのようにして世界中に広まったのか、自国の内にはどのようにして広まっていったのか・・・争うことなく、国難を引き受け、この現実と謙虚に向き合える国こそ、パンデミック後の時代の大国となるだろう。大言壮語は、飛沫飛ばすのに役に立つのみ。

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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝