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パンデミック訳「老子」14 素朴に復る

 老子爺さんこう述べた。

「正しい道で国を治め、奇策を用いて戦い、
ことさらな事をせずに天下を統べる。
私にどうしてそれが分かるのかといえば、こうだ。
天下に禁令が増えるほど、人々はいよいよ貧しくなる。
人々が便利なモノを手にするほど、国家はますます混乱する。
人々が利口になればなるほど、奇妙なモノが作られる。
法令厳しくすればするほど、裏かくドロボーますます増える。
だから聖人はこう言うのだ。
「私が何にもしなければ、人々自(おの)ずと変化する。
私が静けさ好むなら、人々自ずと正される。
ことさらに事を起こさねば、人々自ずと充ち足りる。
私が無欲であるならば、人々自ずと素朴に復(かえ)る。」」
(「老子」第五十七章)

老子爺さんが理想とする「小国寡民」を実現できれば、パンデミックなど起こりようがない。現代の便利すぎる交通手段が、新型コロナウイルスを瞬く間に世界中に蔓延させてしまった。武漢から欧米に広まった経緯はまだよく分からぬが、島国である日本には、飛行機か船でなければCOVID-19も上陸できまい。実際、欧米から帰国した人から感染の広まった地方は少なくなかった。今は都道府県をまたぐ移動の自粛が声高に叫ばれている。しかし今後に向けてもっと重要なことは、空港および港湾での防疫・検査体制の充実・迅速化だろう。そもそも新型コロナウイルスを国内に入れなければ、「新しい生活様式」なるものをことさらにやらなくても済んだはず。奇策は防疫・防衛のためにこそ必要だ。

「道は永遠に名づけようがない。
原木(げんぼく)のようでちっぽけだが、
天下の誰にも支配できない。
王侯がよくこれを守るなら、
すべてのものが自(おの)ずからに帰順する。
天と地が相い和して甘露を降らせ、
人々は命ぜられずとも自ずからに治まる。
細かく制度が作られ出すと、みな名づけられる。
名づけられても、名もなき状態に止(とど)まることを知れ、
止まることを知るなら危険はない。
天下と道との関係は、谷川が大河や海に流れ込むようなものだ。」
(「老子」第三十二章)

日本には現在、四十七の都道府県がある。新型コロナウイルスの感染拡大により、国の緊急事態宣言も4月16日から全都道府県に拡大、5月4日には5月31日まで延長された。各都道府県外への移動は依然として自粛が要請され、都道府県知事もそう要請している。それはもっともらしく聞こえる。だが、ボーダーランドを好む私のような野人から見ると、なんで「自分の生活圏」ではなく「都道府県」が規準とされるのか分からない。県境地域の住民なら、生活圏が複数の県にまたがることもあるだろう。面積の広い県の住民は、遠出してもよいというのか?他県ナンバーの車を見ると「この野郎、来るな」と思うこともあるが、車のナンバーは必ずしも運転者の現住地を表しているワケではない。私は3月下旬から自分の生活圏内に留まっている。仕事以外は徒歩圏内で過ごしている。行政区分などではなく、自分自身を行動の規準とすべきだろう。

「道は永遠に名づけようがない。
王侯がよくこれを守るなら、
すべてのものは自ずと変わってゆくだろう。
変わってゆきつつも欲が起これば、
私は名もなき原木(げんぼく)でこれを鎮める。
名もなき原木でこれを鎮めれば、欲はおさまる。
欲をおさめて清(す)み静まれば、天地は自ずと正常になる。」
(「老子」第三十七章)

今は誰もが、新型コロナウイルス収束のために様々な欲を抑えて生きている。中には無頓着に山や川へ遊びに行き、遭難などして社会にいらぬ迷惑をかける人もいるが・・・。人間は急な変化に弱いもの。ストレス解消のために今まで自ずとやっていたことができないとなれば、別の方法を試しつつ、ストレスを鎮める他はない。「無名の朴(ぼく、樸)」とは、天地自然の道のこと。天地自然の道にかなった素朴な生活を説く、老子爺さんのこの「道徳経」五千言こそ、「無名の朴」に他ならない。

「利口ぶらず大言壮語しなければ、民衆の利益は百倍にもなる。
高度な技術も大金も捨ててしまえば、ドロボーする輩もいない。
あれこれ計略めぐらさなければ、民衆は嬰児(みどりご)の心に復帰する。
今述べた三つのことが分かりにくければ、簡潔にこう述べよう。
素顔を現わし質朴な心を抱け、
私利私欲を弱めよ、
学んだことを鼻にかけず、いらぬ心配するな。」
(「老子」第十九章)

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(写真は2018年10月、白山)

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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝