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パンデミック訳「老子」5 天地の母

 老子爺さんこう述べた。

「混沌としたモノが、天地より先に生じた。
音なく形なく、独立して不変、
天地の母ともいうべきモノだ。
私はその名を知らない、字(あざな)をつけて「道」と呼ぶ。
私は強いてこれに名づけて「大」と呼ぶ。
大なるモノは運行し、運行すれば遠くゆき、遠くにゆけば返ってくる。
道は大であり、天は大であり、地は大であり、人もまた大である。
宇宙には四つの大なるモノがあり、人はその一つなのだ。
人は大地を依り処とし、大地は天の運行を依り処とし、天は道のはたらきを依り処とし、道は自(おの)ずから然ることを依り処とする。」
(「老子」第二十五章)

人類は天地を依り処とし、大自然の理(ことわり)に順いながら発展してきた。だが、その活動が度を過ぎ、天・地・人のバランスが崩れてきているようだ。近年の気候変動と災害の多発然り、そして新型コロナウイルスによるパンデミック然り。COVID-19は、人類の大量かつ高速な移動を依り処として、瞬く間に地球上に拡散したのだ。

「回帰するのが道の動き方、柔軟なのが道のやり方。
すべてのモノは有から生じ、有なるモノは無から生じる。
道は一なる混沌を生み、一は二なる陰陽を生み、二は混じり合って沖和の気を生み、この三つから天・地・人、すべてのモノが生み出される。
すべてのモノは陰陽の二気を併せ持ち、
沖和の気でよくバランスとるのだ。」
(「老子」第四十一章)

新型コロナウイルスのパンデミックを誰かのせいにする人もいれば、ウイルスのせいにする人もいる。だが、より広く深く見るならば、現代人の大量消費・大量生産、大量輸送・大量移動という活動の仕方こそ、急速なパンデミックの一因といえないだろうか?二十一世紀に生きる私たちの、より高速化し莫大化する活動が、ウイルスも拡散し大気の組成も変え、天と地に様々な反作用を生み出しているのではないか?

「人は、孤児や寡(やもめ)や善くない者になりたくはない、
だが王侯はそれらを称号とする。
物ごとは、損をすればかえってもうけ、
もうけりゃかえって損するものだ。
古人に教わったことを、私も人に伝えよう。
「強すぎる者はよい死に方をしない」、
私はこれを教えの父とする。」
(「老子」第四十二章)

人類が飽くなき欲望を追求して繁栄を謳歌すれば、地球はますます温暖化し、スーパー台風や竜巻が増え、氷河も融けて海水面が上昇する。人やモノと共に、虫も細菌もウイルスも短時間で遠くへ移動し、様々な感染症がたちまちに広まる。新型コロナウイルスのパンデミックで各国が非常事態宣言・緊急事態宣言を発令し、私たち人類は今、先の見えない中で外出を自粛している。だがこの苦しみが、図らずして大気汚染や気候変動の抑制につながっている。各国のリーダーや学者先生方が話し合ってもできなかったことが、今、地球上で自ずと行われているのだ。もし地球の外からこの状況を観ているモノがあるとすれば、こう言うだろう。「人類もまだ捨てたもんじゃないな。」

「天地の間で最も柔軟な水が、堅固な岩を削り、くり貫く。
形なき水が、隙間のない処に入ってゆく。
私はこのことによって、ことさらに為さないことが有益であるのを知った。
言わずして教え、為さずして利す、
天地の間に、これに及ぶものは稀だ。」
(「老子」第四十三章)

大自然の道、天地の母は、言わずして教え、為さずして万物を利す。私たち人類が新型コロナウイルスに直面してとり始めた行動の変化は、人の命を救うだけでなく、一時的に大地や大気のバランスを回復させ、今後の大自然と人類の共存融和に向けて、大きな一石を投じることになるだろう。
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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝