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移民カメムシ

 先月(2019年10月6日)、外来の「巨大カメムシ」、キマダラカメムシが私のねぐらの網戸に現われたことを記しました。今度は別の外来カメムシに遭遇しました。11月4日、岐阜県山県市でのこと。今の時期はクサギカメムシがあちらにもこちらにもいますが、ふと、見慣れないカメムシが一匹いるのに気づきました。
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地味なクサギカメムシとは違って色や模様が珍しく、写真を撮りました。後で調べてみると、マツヘリカメムシでした。元々アメリカ西部にいたカメムシですが、アメリカ東部に分布を広げ、二十世紀末にはイタリアからヨーロッパへ進出、二十一世紀になると東京西部から関東へ、さらに日本全土に進出中。イタリアには港か空港から入ったらしく、日本にもおそらく飛行場から入ったのでしょう。東南アジア・台湾・中国に棲息していたキマダラカメムシは江戸時代に長崎に定着しましたが、彼らもオランダ船や中国船に乗って長崎に来たはずです。オランダ東インド会社の医師として安永4~5年(1775~76)に長崎の出島に滞在したスウェーデンの医学者・博物学者、カール・ツンベルク(Carl Thunberg)は、許可を得て長崎近郊で植物採集もしており、彼の旅行記には日本で採集した昆虫の中にキマダラカメムシの学名(fullo)も見られます(山田珠樹譯註「ツンベルグ日本紀行」)。キマダラカメムシは二十一世紀になると本州に進出し、マツヘリカメムシと同様、日本全土に分布を広げつつあります。11月5日には山県市でも、クサギカメムシより一回り大きいキマダラカメムシに遭遇しました。
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 マツヘリカメムシもキマダラカメムシも、自力で大海をわたれるはずはなく、人間が動かす船や飛行機に乗り、港や空港から新天地に入ってきたのでした。彼らからすれば、たまたまコンテナ等に入ってしまい、人間の活動によって遠い異境に運ばれてしまったのでしょう。今さら故郷に帰る術もない彼らには、新天地で生き死にするより他ないのでした。逆境を乗り越え、環境の異なる新天地に定着しつつあるこれらのカメムシたちを、排他的に侵入種と見るか、融和的に帰化種と見るか。在来のカメムシにとっては彼らは脅威でありましょう。
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(ヒメハサミツノカメムシ、白山にて、2019年5月24日)
しかし、環境も生物相も変化してゆくもの、永遠不変ではあり得ません。人類の活動は他の生物たちをも巻き込んで、地球の環境も生物相も変えつつあるのです。移民カメムシたちを責める資格など私たちにはありません。彼らはそのうち、宇宙船にまぎれこんで宇宙に分布を広げるかもしれません。留まることのない人類の活動。私たちは一体、どこへ向かっているのでしょうか?
 人間が勝手に作った線引きを、自然は絶えず乗り越えてゆきます。物流のスピードが速まれば速まるほど、虫たちの国境を越えた移動も、そして生物相の変化も、一層速まることでしょう。私たち人類は一体、どこまで突っ走るのでしょうか?そして移民カメムシたちは、どこまで走り続けるのでしょうか?

「彼女はまだ走り続けている、立ち止まるために。」(U2)

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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝