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白山美濃禅定道登拝・下

(承前)
 翌10月24日朝6時、大汝峰より御前峰・剣ヶ峰・翠ヶ池を遥拝。
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大汝峰の北東より眼下に火の御子峰、彼方に立山和光大権現を遥拝。
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十一世紀前半、権大納言藤原能信作と伝わる「白山大鏡」記載の三十七所の秘窟に、

「第三十四、司命神仙洞、五道大神列座、一切衆生一期在生罪業裁断、注不漏露之外、去人間之時、送帝釈之注札、依善悪之業因、可来越南地北峰」

とあり、大汝峰の「北峰」には「司命神仙洞」があったようです。「司命」とは道教で人の生死を司る神。人間の身中に寄生している三尸が庚申の日になると天に上り、司命にその人のしでかした悪事チクるごとに、司命は罪の大小に応じてその人の寿命を三百日、あるいは三日縮めてしまいます(「抱朴子」)。紀元前7年に前漢の成帝の郎中(護衛)に任ぜられ、後に世を棄てて仙人となった劉根は、華山で神人から「長生したければ、まず三尸を去りなさい」と教わっています(「神仙伝」)。白山の「司命神仙洞」は、大汝峰北東のこの辺りにあったのでしょうか、それとも火の御子峰のことでしょうか。太上老君を拝み、翠ヶ池へと下りました。
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「老君を見れば則ち年命延長して、心は日月の如く、事として知られざること無きなり。」(「抱朴子」)
 血の池を経て、千蛇ヶ池へ参詣。
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小雨が降りカッパを羽織りました。万年雪はかなり融けています。この雪が融けてしまうと泰澄大師が封じ籠めた千蛇が出てきてしまうため、池の上の御宝庫が崩れ落ちるとのこと(「白山草木志」、「白山全上記」)。六道地蔵跡に参拝し、千蛇ヶ池と大汝峰を遥拝。
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御前峰へと登ってゆくと、雲間に槍ヶ岳。
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7時に御前峰に戻り、下山。高天ヶ原の祭神・天照大御神の南方に、御子の天忍穂耳尊(アメノオシホミミノミコト) を祀る別山。
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さらに代々受け継がれて今上天皇に至る、わが国の皇統。雨はしとしと降る程度で寒くなく、ホシガラスを見つつ平瀬道を行道。山道を離れ、御前峰から四十五分ほどで御厨池(みくりやのいけ)に参拝。
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慶雲年中(704~707)に苦行人「神融」が法華経の功力で毒龍悪鬼を籠め、天慶2年(939)に浄蔵法師が水を酌み、天喜年中(1053~58)に日泰(日台)上人が水を酌み、十二世紀に末代上人(富士上人)が水を酌んだと伝わる池です。御厨池について詳しくは、当ブログの

2015年10月30日「大白川より白山登拝」
2017年11月4日「白水滝~白山登拝」
2018年4月18日「翠ヶ池・千蛇ヶ池・御厨池」
等をご覧いただければと思います。
 野路汝謙「白山紀行」(十七世紀後半)には

(転法輪の窟より)「又二町余谷を下りて御厨屋とてすさまじき池あり。大師禅定の時九頭竜出現の所なりと云。」

とあります。藪中の池畔に坐し、立山を遥拝しつつ観音経読誦。
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池の上から御前峰を遥拝。
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この池の周辺の藪中にある、秘窟。
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かろうじて人が一人通れる隙間を下ると、地底にほぼ垂直に続く洞穴。
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ロープなしでは二度と戻ってこれないでしょう。「白山大鏡」に

「第二十三、深沙龍宮底洞、云白山娘之住、九頭八龍居、雖来劫災、更無破字、泰澄変約之根本仙洞也、(正法明如来浄土無明之雲晴顕法性之月)十一面観自在、号仙崛也、又云尊勝陀羅尼仙洞、誠云正殿峰神仙洞也」

とありますが、この洞穴の奥底には、たしかに約千三百年前に泰澄和尚の前に現われた九頭龍がいてもおかしくありません。「白山紀行」には転法輪の窟について

「大師参篭の秘密にて窟中に橋ある水あり。深奥は別の一世界なりと云う。」

とありますが、この洞穴の奥底にも「別の一世界」が存在することでしょう。なまじいに入れば、二度と戻ってこれない別世界が・・・。
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 地上に戻ると、雨は止んでいました。カッパを脱ぎ、展望コースを降下。
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10時に南竜ヶ馬場へ下り、赤谷へと向かう途中、ぬかるみに滑って転んで手足から出血。危険な岩場や藪では無傷でも、何でもない登山道でこうなるものか・・・。これも白山妙理大権現の、大自然の道のお諭しです。赤谷で傷を洗い、油坂を登ってゆきました。
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 雨止むも霧で展望はありません。11時、天池参拝。
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正午すぎ、別山登拝。
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三ノ峰を下ると、かろうじて咲き残るタカネマツムシソウ。
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アザミ。
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15時に銚子ヶ峰着、小雨が降ってきました。母御石から下は樹も多いのでカッパは着ずに行道。母御石からの尾上郷の紅葉。
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前日の往路は好天で、山道から樹間に山々を見つつ歩きましたが、今日は霧で展望なく、かえって紅葉黄葉が引き立ちます。
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おたけり坂のかむろ杉。
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16時半、大杉着。
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樹齢千八百年の古木は、泰澄大師が白山三所権現を開かれるずっと前から此処に立っていたのでした。

「上古に大椿なる者あり、八千歳を以て春と為し、八千歳を以て秋と為す。而るに彭祖は乃今(いま)久を以て特(ひと)り聞こえ、衆人これに匹(くら)ぶ、亦た悲しからずや。」(「荘子」逍遙遊篇)

八百余歳まで生きたという彭祖も、古木からすれば若いもの。白山開山千三百年の歴史も、弥生時代から此処におられる大杉からすれば短いものです。

「合抱の木も毫末より生じ、九層の台も累土より起こり、千里の行も足下より始まる。」(「老子」64章)

「天地の能く長く且つ久しき所以の者は、其の自ら生ぜざるを以てなり。故に能く長生す。是を以て聖人は、其の身を後にして身は先んじ、其の身を外にして身は存す。」(「老子」7章)

千八百年前はまだ小さかったこの樹がかくも長生できたのは、周囲の樹より先に先にと枝葉を伸ばしたからではなく、「根を深くし柢を固くし」(「老子」59章)、浪費せず徳を積んできたからでしょう。根の浅い高木は、台風に根こそぎ倒されてしまうものです。今清水社跡に参拝し、無為にして為さざるなき大道のお導きに感謝しました。
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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝