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マダニフィストの手記5・気候変動

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 俺の名はマダニフィスト。ある野郎の心に寄生している魔ダニだ。
 古代中国の太上老君こと老子爺さんは、こう説いた。

「人は地に法(のっと)り、地は天に法り、天は道に法り、道は自然に法る。」

俺なら、「人は地に法り」の前にこう付け加えるだろう。

「細菌はダニに法り、ダニは人に法り、」

と。
 太陽から放射された光線が地球に届くと、オゾン層で紫外線が吸収され、可視光線の約三割が大気や地表に反射し、残りの光線が地表を温める。夜になると、地表から赤外線が宇宙へと放射され、地表の温度は下がる。
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放射冷却ってやつだ。だが、水蒸気や二酸化炭素といった温室効果ガスがこの赤外線の一部を吸収し、地表に返す。温室効果ガスがなかったら、地表の気温は氷点下だぜ。アンタらのここ二百年来の活動で大気中に0.03%あった二酸化炭素が増え 、地表の気温が上がってるってことは俺らも肌で感じてる。俺らだって四十℃を超すような暑さは苦手だし、ゲリラ豪雨や竜巻や山抜けもタマらん。けどな、アンタらが二酸化炭素を「ダーティー」だの水素を「クリーン」だのと言ってるのは馬鹿げてるぜ。地球は四十六億年の昔から寒暖を繰り返してきたんだ。将来、地球がまた寒冷化して氷河期になったら、アンタらは二酸化炭素を「ダーティー」だなんて言ってられるかい?アンタらのことだ、きっと化石燃料をボンボン焚いて温室効果ガスを増やし、放射冷却を減らそうとするだろう。そもそも、アンタらは炭酸の入ったビールやコーラののどごしを味わっては口から「ゲッ」とおっしゃりながら濃厚な二酸化炭素と水蒸気を放出し、オナラをプッこいては朦々たる硫化水素を噴出なさる。俺らの前腕部にあるハラー器官は、アンタらの出す熱や二酸化炭素や硫化水素やアンモニアにはとても敏感なんだぜ。自分自身のことを忘れて、二酸化炭素は「ダーティー」だの水素は「クリーン」だのと、「よくもそんなことが言えますね」。
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 海流や台風やハリケーンは、低緯度地帯の過剰な熱エネルギーを高緯度地帯へと送り、地球の熱のバランスをとろうとする。おかげで、アンタらや俺らが生活できる気候帯が保たれてるってワケだ。老子爺さんは

「天の道は余り有るを損して足らざるを補う。人の道は則ち然らず。足らざるを損して以て余り有るに奉ず。」

って説いたが、まさにその通り。大自然の道ってヤツは、陰と陽のバランスを補償しているのさ。
 太陽から地表に反射せずに届いた光線と、二酸化炭素と水を用いて、植物は光合成して有機物を作り成長する。
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植物を草食動物が食べて有機物を栄養として摂取し、動物を肉食動物が喰って有機物を栄養として取りこむ。動物が息を吸って肺に入れた酸素を血液が体内の各細胞に送ると、有機物が分解されてエネルギーとなる。老廃物で光合成の原料でもある二酸化炭素は、血液によって肺に送られ吐く息と共に出される。俺らはアンタらのおいしい血液をたっぷり吸って有機物を栄養としていただき、アンタらと同じく呼吸によってエネルギーを得る。俺らの体内に寄生し、だ液からアンタらに移っちまうと日本紅斑熱を起こすリケッチア、ライム病や回帰熱を起こすボレリアといった細菌たちも、俺らやアンタらから栄養を取って呼吸によってエネルギーを得てるのさ。ボレリアみてぇに低酸素の環境を好んだり、乳酸菌や納豆菌や藍菌みてぇに酸素を使わず有機物の発酵腐敗によってエネルギーを得てるのもいるけどな。やがて俺らやアンタらがくたばると、細菌やカビたちが有機物を分解してエネルギーを得、俺たちを無機物、即ち大地へと返してくれる。細菌はダニに法り、ダニは人に法り、人は地に法り、地は天に法り、天は道に法り、道は自然に法っているのさ。
 老子オヤジはこうも説いてる。

「天は清きこと已(や)む無からば、将(は)た恐らくは裂けんと謂う。
地は寧(やす)きこと已む無からば、将た恐らくは発(くず)れんと謂う。
神は霊(くすし)きこと已む無からば、将た恐らくは歇(や)まんと謂う。
谷は盈(み)つること已む無からば、将た恐らくは竭(つ)きんと謂う。
万物は生ずること已む無からば、将た恐らくは滅びんと謂う。
侯王は貴高なること已む無からば、将た恐らくは蹶(たお)れんと謂う。」

天がいつもキレイであろうとすれば、温室効果ガスも雲もなくなり、放射冷却で寒冷化しちまう。
大地がいつも安定しようとすれば、地殻にひずみがたまってやがて大地震だ。
神さまがいつもピカピカしてたら、当たり前になって霊験も感じられなくなるもんさ。
谷がいつも満タンでいようとすれば、すぐに溢れて大洪水となる。
生きものが増えすぎれば、結局骨肉相食む結果となる。
王侯がいつもお高くとまって独善的なら、いずれ誰かに倒されること請け合いだ。
 アンタらは、自分たちの行為が地球の気候を変動させつつあることに気づいた。だからといってアンタらが地球の気候をコントロールできるなどと考えるなら、とんでもないうぬぼれさ。自分の感情もコントロールできないクセに、どうやって天地をコントロールするんだい?当面、地表の気温は落ちつく処まで上昇するだろう。大自然の道ってのは、結局はなるようになるもんだ。温暖化にしろ寒冷化にしろ、気候は変動するものなんだぜ。天地に合わせて俺らも柔軟に適応してゆこうぢゃないか。
 アンタらの体は、寒い季節には基礎代謝を上げて寒さに適応している。心は環境の変化に暑い寒いとブーたれるが、体は黙って変化に対処してるんだぜ。

「躁は寒に勝ち、静は熱に勝つ。清静は天下の正と為る。」(「老子」)

寒いときに「寒い寒い」とじっとばかりしてないで活発に動けば、基礎代謝が上がって寒さに強くなるもんだ。四十℃近いクソ暑さのときは無理に動き回らず、安静にしてるのが賢明さ。大量の汗かけば水や塩分不足で熱中症になるもんな。真夏は四十℃超すこともあるスペイン南部の「シエスタ」のような昼寝の習慣は、「熱に勝つ」ための先人の知恵だ。だが、暑いときに汗かかないのも問題だ。余った熱が汗として出ないと体が「温室効果」をおこして熱中症になる。アンタらみてぇにエアコンばかりに依存してたら、持ち前の暑さ寒さへの適応力・体温調節機能も退化しちまうぜ。アンタらにも俺らにも天地の清濁や動静なんてコントロールできっこない。が、幾多の気候変動を乗り越えてきたワイルドなご先祖さまのおかげでこの身に無意識に備わっている適応力・機能は、意識すればある程度コントロールできるようになるだろう。長い目で見れば、このような力・機能を維持し高めてゆく素朴な生活や知恵こそ、子々孫々への最高のプレゼントだと思わないかい?
 因みに、スペインでは俺らは「ガラパタ」って呼ばれてる。ガラクタじゃないぜ。三年前(2016年)にスペインで俺らがアンタらの「サングレ」(血)を吸ってたとき、「サリーバ」(だ液)からアンタらに移ったクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)ウイルスの感染者が出た。ヨーロッパで初めてのCCHF感染だ。2012年以降日本で毎年感染が確認されてる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス同様、CCHFウイルスには未だ有効なワクチンが存在しない。SFTSウイルスもCCHFウイルスも、俺らの母ちゃんが感染していれば卵から出てきたベイビーたちも感染してるようだ。また、俺らのご宿主さまが感染していれば、血を吸った俺らも感染しちまうぜ。俺らにとってアンタらは大切なご宿主さまだ、俺らには殺意なんてけっしてないぜ。俺らも宿主の動物たちも、こいつらに感染したからといって命に別条はないんだが、アンタらだけにゃ命にかかわる「ペリグロ」(危険)なウイルスだ。こういうウイルスたちが何をたくらんでいるんだか俺にも皆目分からんが、何らかの意味はあるんだろうな…。俺らも奴らに利用されてるのかもしれない。とにかく、気候にせよ健康にせよ、お互い「ペケニェス」(些細なこと)をあなどらないようにしようぜ、アミーゴ。

「小を大とし、少を多とする。怨みに報ゆるに徳を以てす。難きを其の易きに図り、大なるを其の細(ちい)さきに為す。天下の難事は必ず易きより作(おこ)り、天下の大事は必ず細さきより作る。」(「老子」)
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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝