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鳩居峯五宿順拝行~台風から一年

 9月9日に上陸した台風15号により、千葉県では一週間以上たっても広範囲で停電が続いています。被災地の皆さまの大変さをお察し致しますと共に、禍を転じて福と為せますよう、応援しております。今回の台風による大規模停電は、昨年(2018年)9月4日の台風21号により関西や岐阜で起きた大規模停電を想起させますが、いざ一年前のことを思い起こそうとしても、昨年の他の災害とごっちゃになって記憶が曖昧になっているのに気づかされます。記録を残しておくことの大切さを実感しました。
 昨年(2018年)の台風21号では、高潮で関西空港が浸水、強風により各地で倒木や家屋損壊が発生し、関西では二週間、岐阜山間部では一週間停電が続きました。ただ、長引く停電の報道は、9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震とその後の「ブラックアウト」の報道で影を潜めました。私は当時、白山美濃馬場・白山中宮長瀧寺(ちょうりゅうじ)から尾根伝いの古の山伏の行場「鳩居峯」のうち五宿目までを「喰わず座らず撮らず」毎月二度巡拝しておりました(今も毎月一度行じています)が、台風通過翌日の9月5日にカメラ持参で入峯し、山中の倒木や崖崩れを確認しました。あれから一年、毎月この山域を歩いている者として、その後の様子を記録しておくことも災害の記憶の風化を止める一助になるかと思い、9月16日、カメラ持参で入峯してきました。
 朝、白山美濃馬場・長瀧寺の大講堂と豪潮律師宝篋印塔に参拝して鳩居峯入り。
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四十分ほどで一ノ宿(本地・不動明王)に参詣。
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越前・美濃国境尾根へと藪中を登ってゆき、樹間に桧峠の奥に白山三所権現を遥拝。
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国境尾根に出ると風爽やか、入峯から二時間で二ノ宿付近着、大日ヶ岳を遥拝しつつ二ノ宿本地・釈迦如来を供養。三ノ宿へと藪の尾根をアップダウンしつつ縦走、三ノ宿への登り坂に巨大な倒木があります。
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この倒木は昨年の台風によるものではなく、ずっと前からあります。このような倒木は、道なき藪の中では恰好の目印となります。
 三ノ宿へと縦走し、水の豊かな谷を遡上。
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ハクサンカメバヒキオコシ咲く谷を舞う、アサギマダラ。標高千二百m付近のこの谷は、無雪期に渇れたのを見たことがありません。
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源流から藪を登って作業道に出、入峯から三時間強で三ノ宿三角点登頂。北に毘沙門岳、その背後に白山三所権現。
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この辺りから拝む白山は、別山(本地・聖観音菩薩)と御前峰(本地・十一面観音菩薩)の間に大汝峰(本地・阿弥陀如来)が頭を出す、山越来迎阿弥陀三尊。念仏をお称えし、三ノ宿本地・阿弥陀さまと白山三所権現王子眷属を供養しました。
 三ノ宿から藪の尾根を北西側へ少し下ると、塚のような処があり、三ノ宿の行場跡かもしれません。
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藪中に咲く花。
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鞍部に下って西山へと藪と作業道を登り、眼鏡ストラップ・マスク・軍手着用で高さ二~三mの物干し竿の如き笹藪に突入。入峯から五時間弱、西山に登頂しました。山頂の藪中に、巨大な倒木。
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一年前の台風21号で根元から折れ、先月までは隣のモミジの大木の枝をへし折りもたれかかっていましたが、とうとう横倒しになってしまいました。が、根元はまだ半分つながっており、死んではいません。
 西山から、足の踏み場もない二~三mの笹藪地獄を、樹間に毘沙門岳の方角確認しつつ降下。毘沙門岳の背後には大日ヶ岳。
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積雪期は二~三mの雪上をスイスイ下れますが、無雪期は藪で方向を間違えやすく、曇って毘沙門岳の姿が確認できないときは六十度登っていても油断禁物です。が、昨年の台風21号で根こそぎ倒れた大木が、藪の尾根から間違って鞍部より下の谷まで進んでしまうまさにその場所に北向きに倒れ、この倒木に沿って進んでゆけば、鞍部を経て四宿目の多和ノ宿に至ります。台風は災いをもたらすばかりではなく、このような神風をももたらすのでした。
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 入峯から六時間、多和ノ宿跡参拝。
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多和ノ宿は毘沙門谷と西山谷にはさまれており、私がこの行を始めた三年前はまだ西山谷を少し下れば水が得られましたが、その後、多和ノ宿より上まで作業道が延び、谷は捨て木で埋まって水も渇れてしまいました。多和ノ宿から作業道を五分くらい下ると、別の谷の水が得られます。
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鳩居峯の現存する、あるいは見つかった行場(宿)跡は、必ず近くに水場があります。本地仏にお供えするために必要だったのでしょう。多和ノ宿本地・毘沙門天を供養し、毘沙門谷を上へ。
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水のない毘沙門谷は、天然の山道。やがて西山に劣らぬ笹藪地獄を漕いで、入峯から七時間で毘沙門岳に登頂しました。
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 南に西山と三ノ宿、その背後に滝波山・美濃平家岳・平家岳の三山と、高賀の山並。
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北東には大日ヶ岳、ひるがの高原のペチュニアの花畑も見えます。
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鳩居峯は、大日ヶ岳からさらに天狗山~芦倉山~丸山の凄まじい藪を経て、銚子ヶ峰手前の神鳩宿へと続きます。北側には石徹白の集落、白山は雲隠れ。
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毘沙門岳北は藪はなく、登山道を桧峠方面へ降下。一年前の台風21号で倒れた樹が山道を塞いでいます。
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谷まで下ると、昨年(2018年)7月初旬の豪雨による崖崩れの跡。
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入峯から八時間強、旧桧峠参拝。
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桧峠の泰澄大師にお水供えて参拝し、大日ヶ岳登山道へ進んで五宿目の国坂ノ宿にて本地・十一面観音さまに観音経をお唱えしました。
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 国坂ノ宿から旧桧峠に戻り、古の白山美濃禅定道を降下。幅五十cmを残して崩壊した道。
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昨年(2018年)7月3日から8日まで続いた豪雨によるものです。床並社跡のすぐ側に根こそぎ倒れてきた杉。
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こちらは、昨年9月の台風21号によるものです。床並社跡から下ってゆくと、カモシカの親子がいました!
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母親と子供でしょう。挨拶して長良川へと降下。昨年7月の豪雨で崖が崩れ国道が通行止めとなった歩岐島地区は、その後、川側に車線ができ、一年以上たって法面の工事もだいぶ進んできました。
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川を渡って千城ヶ滝(駒の尾滝)に参拝し、鉄塔巡視路を上へ。
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台風21号でアカマツの大木が根こそぎ倒れて巡視路を塞ぎ、しばらくは迂回していましたが、今年4月には幹が切断されてまっすぐ歩けるようになりました。
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 縦走してきた毘沙門岳・西山・三ノ宿を遥拝しつつ鉄塔巡視路を進み、御坊主ヶ洞へ。
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根こそぎ谷の向こう岸まで倒れた杉。
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約五百年前に長瀧寺の敬愚比丘が焼身供養を行じられた見附ノ大岩に着いた頃にはすでに暗く、ヘッドランプ点けて参詣。昨年7月の豪雨でできた土石流跡を渡って降下、入峯から十二時間で長瀧寺に戻りました。
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今日はいつもより少し時間がかかってしまいましたが、一年前の台風21号や7月豪雨の爪跡は山中に歴然と残っており、私の如き野人が記録しなければ、いつの倒木・崖崩れかも永遠に忘れ去られてしまうことでしょう。
 同じ山域を毎月、あるいは毎日歩いたところで、まかり間違えば天狗か中毒患者になるのがオチです。しかし、藪も雪も深いこの閑かな鳩居峯の山川草木は、名利を求めず謙虚に歩き接するならば、大自然の道について朴訥と語っていることに気づかされます。昨年の台風21号の翌日(2018年9月5日)にこの行場を巡拝した際の当ブログ記事の文末を再掲します。

「帰路、長良川沿いの国道を南下中、コンビニに寄ると、弁当もおにぎりもサンドイッチも全くありませんでした。別のコンビニも、弁当は残っていましたが、おにぎりやサンドイッチ、パン類も空っぽです。郡上市内ではまだ停電が復旧していない世帯が多数あり、今晩も復旧できないそうです。(中略) 地球温暖化は、ある意味、人類の過去の行為の結果であるといえましょう。ご先祖さまを責めたところで、どうにもなりません。自然の側からすれば、なるようになっているだけです。この因縁果報と、どう向き合ってゆくのか、どう折り合いをつけてゆくのか。自分だけでなく、皆が助かるにはどうしたらよいのか。今年の様々な災害は、私たちに多くの経験と課題を与えています。

灯が消えた時、闇の中に飛び込めば、見えてくる。
灯が消えた時、疑うなかれ、僕らそのものである灯を。
(U2「ブラックアウト」)」
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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝