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伊豆山神社~岩戸山登拝

 7月14日朝、新富士から三島を通る新幹線の車窓より拝んだ富士山は、頂部の谷筋にわずかに雪が残っていました。残雪は、三日前に拝んだ白山連峰の別山と同じくらい。10時頃熱海に着き、伊豆山神社へと歩き始めました。般若院に参拝し、30分程で伊豆山神社着。明治の神仏分離までは伊豆大権現、または走湯大権現と称し、祭神は天忍穂耳尊、本地は千手観音菩薩とのこと。奇しくも、白山三所権現・別山の祭神も同じく天忍穂耳尊であります。役行者等を拝みつつ石段を上り、伊豆大権現に参拝。右奥の白山社への上り口に入ると漸く喧騒を離れ、静かな樹陰の山道をアオスジアゲハが舞っていました。
 10分弱で白山社着。


天平年間に疫病が流行した折、「白山の神威を頼むべし」との神託があり、此処に積もった雪をなめると疫病が癒えたとのことです。般若心経と白山三所権現ご真言・ご宝号、念仏をお唱えし、天平の疫病流行の犠牲者に回向しました。


 天平9年(737)、大陸から九州に伝染した疱瘡(天然痘)は日本中に流行し、右大臣・藤原武智麻呂を始め、政権の中枢にいた房前、宇合、麻呂の藤原四兄弟が次々と亡くなる程でした。武智麻呂は近江国守時代に伊吹山や比叡山に登拝し、霊亀元年(715)には越前・気比の神の夢告により神宮寺を建てるなど、神仏習合の先駆ともいえることを為した人です。同じ越前の越知山から白山に登り、養老元年(717)に十一面観音菩薩を感得した泰澄大師も、あるいは武智麻呂の影響を受けていたのかもしれません。
 天平9年の疱瘡大流行の際、泰澄大師は聖武天皇の勅により十一面法を修したと伝えられており、近江高月・渡岸寺の麗しい十一面観音菩薩像も、この時に聖武天皇の勅によって泰澄大師が彫ったと伝えられています。さらには、伊豆山神社に程近い箱根湯本の白山神社も、天平10年に泰澄大師の弟子・浄定行者が十一面観音菩薩を祀ると霊泉が涌き出したと伝えられており、治療法がまだなかった天然痘感染の恐怖におののく人々の為に、泰澄大師と弟子達が、そして白山本地・十一面観音菩薩が懸命に立ち働いていたことが想像されるのです。
 天然痘ウイルスは今日では既に根絶されましたが、感染症の恐怖は新型のMERSコロナウイルスやH7N9型インフルエンザウイルス等々、決して過去のものではありません。特に山に登る者が気をつけねばならぬのは、マダニから感染するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)でしょう。私も昨年秋に仏御前の滝から荒島岳に登った際にマダニに咬まれましたが、マイクロSDカードを一回り小さくしたような平べったい虫が皮膚に頭からもぐり込んでも痛みは感じず、初めは棘が刺さったのだと思っていました。しかし、ピンセットで抜こうとすると脚がモゾモゾ動いたのでビックリ仰天しました。如何に小さくとも、自然には我を捨てて謙虚に向き合わねばなりません。
 白山社から子恋の森を通って結明神本社から奥に続く山道へ。11時20分、本宮社に着きました。


伊豆大権現は元々、日金山に祀られていましたが、此処に遷され、さらに下の現在地に遷されたとのこと。伊豆権現と白山権現のご宝号をお唱えしました。
 本宮社から林道に出、やがて林道終点から藪を登ってゆくと、ガードレールを越えて舗装道に出ました。左手に少し上ると道は行き止まり。南に熱海の市街が見渡せました。


道を戻って下ると、鉄塔巡視路、即ち岩戸山ハイキングコースがありました。尾根筋の道を登ってゆき、12時20分登頂。北側に少し下った処にある鉄塔から、富士山頂を遥拝することができました。


山頂にはやがてモクモクと積乱雲が発達し、ドン、と雷鳴が数発轟いてきました。


この辺りからだと、富士山とほぼ同じ方角に白山をも拝むことになります。西には十国峠。


富士浅間大菩薩、白山妙理大権現、伊豆大権現に投地礼し、富士山と向き合って正身端坐しました。
 富士山は晴れようが曇ろうが、世界遺産に登録されようがされまいが高くも低くもならず、寂然として安住不動です。晴れたり曇ったり高くなったり低くなったりしているのは、私の心であり、人間の心でありましょう。
 13時下山、ハイキングコースを戻って大企業の保養所が建ち並ぶ車道を通り抜け、14時前に結明神本社に戻りました。子恋の森から白山社へ戻り、社の後ろにひっそりと立つ「白山大権現」の石碑に掌を合わせました。碑の前には白山権現をお護りするかのように、樹の洞に蜜蜂が密集していました。


蜂が女王蜂に帰依する如く、私も白山妙理大権現に、無上なるものに帰命頂禮します…観音経、十一面観音菩薩ご真言、白山権現ご宝号をお唱えし、伊豆山神社へと下りました。
 境内の資料館には、明治の神仏分離まで掲げられていた伊豆大権現の扁額や、常行堂の本尊であった阿弥陀様のお像が安置されていました。常行三昧は天台智者大師の「四種三昧」の一つであり、伊豆大権現の別当寺・般若院は真言宗ですが、往古は白山三馬場と同じく天台の行が修されていたのでしょう。


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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝