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鷲鞍岳登拝

 山登り等の為に未明に出発する際は、ご近所の方々に迷惑にならぬよう配慮が必要です。忍び足で歩き、そっと戸を施錠し、車のフロントガラスの霜はエンジンをかけずに削ります。車のドアは半ドア状態にして内側から引けば、静かに閉めることができます。
 23日朝、油坂から越前に入ると気温は-7℃でした。7時半に穴馬総社に参拝。九頭竜ダムに沈んだ穴馬郷の神社が合祀されています。境内は深い雪。除雪車の通る車道に立ち、掌を合わせました。


 九頭竜ダムに駐車し、8時前出発。ダム上の橋は欄干まで雪に埋まり、早速カンジキを履いて鷲鞍岳へ。


対岸に渡って雪の尾根に取り付き、30分程で鉄塔から発電所を見下ろしました。九頭竜ダムから美濃平家岳を越え、三尾山を通って岐阜方面へと電力を送る鉄塔の一つ目であります。


 空は曇っていましたが、9時前、にび色の湖面にようやく日が差しました。


粉のようなサラサラの雪をカンジキで踏みつつ上へ。膝下まで沈むものの、湿っていないのでさほどキツくはありませんでした。10時に登頂。


樹間に見える荒島岳は雲に覆われていました。北に少し下ると反射板があり、北東に丸山、芦倉山、大日ヶ岳を拝むことができました。


丸山から左、白山方面は雲の中。北面して般若心経、白山権現ご真言・ご宝号をお唱えしました。
 10時半に西に続く尾根を下ると、南東に美濃平家岳、平家岳を拝むことができました。


さらに西へ獣の足跡を辿り、一時間程で934m峰着。


南には反射板のある1190m峰。


九頭竜川や九頭竜湖駅を見下ろしつつ、鷲鞍岳へと引き返しました。



 12時半に鷲鞍山頂に戻り、北側の反射板へ。丸山の左に時々小白山の稜線が姿を現わしますが、その奥は雲のヴェールの中。小白山の肩に見える白い山並は、南白山の東辺りでしょうか。左手の雲間に白山でしょうか、白い山が幽かに頭をのぞかせました。


 空を流れゆく雲が白山連峰に雪を降らせ、この雪が太陽の熱に解けて川となります。九頭竜ダムに貯まった水で電気が作られ、山を越えて街へと送られます。白山の、自然の営みによって私たちの日常生活が成り立っているわけですが、電源開発の為に故郷を捨てなければならなかった方々がたくさんいるということも、忘れてはいけません。白山連峰を水源とする四大河川の内、長良川を除く九頭竜川、手取川、庄川上流に作られた、九頭竜ダム、手取川ダム、御母衣ダム。白山に連なる両白山地・揖斐川上流には徳山ダムもあります。水力発電を主目的とした白山周辺のこれら四つのダム建設だけでも、1650戸が水没しました。全国ではどれだけの方々が故郷を去らねばならなかったことでしょう。私自身、家に帰れば先ず電気をつけ、電気ストーブをつけ、ケータイを充電し、テレビをつけ…電気漬けの生活をしています。こうして山で独りすごす時、そんなに電気が必要なのか?と自問せずにはおれません。電源開発の名の下に故郷を去らねばならなかった人々のことを考えるなら、少なくとも電力を無駄に使ってはなるまい、電力に使われてはなるまいと思うのであります。
 問題は大規模な水力発電がいけないとか、二酸化炭素を出す火力発電がいけない、放射能の危険がある原子力発電がいけないということよりも、私たちが電力に依存しすぎている、電力に使われていることにあるのではないでしょうか。私たちは必要のないことまで電力に頼ってはいないでしょうか?大量の電力によって成り立っている私たちの生活。巨大ダムを作り、水力発電所から山々を越えて張り巡らされる鉄塔が必要なのも、私たちの今の生活の為です。放射性廃棄物の処理を子々孫々に託すしかなくても原発を稼働するのも、私たちの今の生活の為です。フィンランドに建設中の最終処理施設では、高レベル放射性廃棄物が安全なレベルに達するまで10万年間保管する計画です。10万年後に「日本」があるのか、今のような人類がいるのか…。10万年前といえば、関東平野はクジラの泳ぐ「古東京湾」、二千m級の「古富士火山」は噴火を繰り返して成長中、そして「古白山」は、現在の大汝峰の北、地獄谷の上に三千m以上の高さで聳え立っていました。私たち人類のご先祖さまはアフリカを出たばかり、日本列島ではナウマン象がのし歩き、氷河期には大陸から原始人が渡ってきたかもしれません。10万年後に私たちの子孫がいるとすれば(彼らがどのような姿、生態をしているのか想像もつきませんが)、今私たちにできることは何なのでしょう?今、私たちが自然から与えられているより多く奪っているのだとしたら、私たちは盗っ人ではありませんか。
 13時半下山。荒島岳が白い肌を現わしていました。


往路のカンジキの跡を踏んで15時に九頭竜ダム着。穴馬総社に参拝し、私たちに与えられている自然の恵みに感謝すると共に、現代人たる己れの生活が、九頭竜ダムを含め発電所建設の為に故郷を離れたすべての人々、福島原発の事故によって故郷を離れている何万の人々の犠牲の上に成り立っていることを、思わずにはおれませんでした。


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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝