FC2ブログ

記事一覧

大シウド谷~丸山登拝

白山麓の秘境、尾上郷の放浪は私の夏の楽しみなのですが、今年は8月からの不順な天候で延び延びになっていました。広大な尾上郷を日帰りで徘徊するには日の長いうちに限ります。9月9日、秋晴れのチャンスを逃さず尾上郷入りしました。

朝5時、御母衣湖畔の林道ゲート前に駐車。薄明の中、未舗装の林道を歩き始めました。



川上からの風は涼しく、30分程歩くと、右手に聳える日照岳の頂を朝日が照らし始めました。



路傍の馬頭観音さまに掌を合わせ、廃屋を過ぎて6時に大黒谷を渡ると、トリカブトが咲いていました。



発電所を経て尾上郷川から大シウド谷へ。森の背後の山の端より、朝日が時々差しました。




7時半に大日谷出合の橋を渡ると、谷は明るい日差しに照らされました。快晴の青い空。小シウド谷出合を過ぎて、さらに大シウド谷沿いの林道を上へ。



8時頃、左下の谷と林道の間の樹上から、バサバサと音がしました。見ると、黒い大きな生きものが急いで樹を降りているのが目に入りました。クマさんです。木の実でも食べていたのでしょう。ホイッスルを吹いてクマさんに挨拶し、立ち止まらずに先へ進みました。

林道は一旦、大シウド谷を離れ、大シウド谷と尾上郷川の間の尾根沿いに上ります。北西に南白山、その彼方に別山を遥拝。



般若心経をお唱えし、別山本地・聖観音菩薩にクマさんと自分の無事を祈りました。林道分岐から土砂崩れをいくつか踏み越え、8時45分に大シウド谷に架かる橋に到着。



いよいよ沢登りの始まりです。眼鏡ストラップと手袋をはめ、大シウド谷に入りました。

谷を進むとすぐに滝が現われました。



幸い、上からロープが垂れており、よじ登ることができました。昨年夏、大シウド谷右岸の尾根を登って丸山と芦倉山の間のヤセ尾根付近に登り、大シウド谷を下ったときは、この滝にロープがあるとは知る由もなく、右岸によじ登って藪化した林道を下ったものでした。冷たく気持ちのよい沢と滝を、腰まで水に浸かりながら遡上。



一時間半程登った処で、大きな滝に出ました。



ロープはなく、素手で登るのは少々危険です。左岸の獣道を辿って山腹の藪を登ってみましたが、急斜面。トラバースして滝上に出ることはあきらめ、斜面の涸れ沢沿いに上へ上へと藪を登ってゆきました。

11時半に尾根に出ました。尾根は西に上っており、薮中に立つ桧の大木からは別山と南白山が拝めました。





観音経を読誦し、別山本地・聖観音菩薩と、この辺りにあったと伝わる白山修験の行場、カウハセの宿の本地・文殊菩薩ご真言をお唱えしました。尾根は西から北西の丸山へと上っており、此処までの藪は激しくはないものの、灌木に笹とツルが交じって面倒です。樹間に丸山の山頂部を見上げ、あと一息、と己れを励ましました。


山頂への藪は厳しく、いっぱいに枝を広げる灌木、木質化したツル、足場もない程繁る乾いた固い笹の只中を、一心不乱に登ってゆきました。




13時登頂。山頂はもちろん藪、坐る処はなく、樹に登って別山を遥拝しました。



雲が出てきて、晴れていれば南白山の後ろに見えるはずの白山頂・御前峰は姿を隠していました。白山三所権現ご真言・ご宝号をお唱えし、一休みして下山。下に傾いでいる藪の登りはキツいものですが、下りは比較的に楽です。ただし、方向を間違えないよう注意しなければなりません。方位磁石を確認しつつ下り、南東に芦倉山から大日ヶ岳へと続く峰々を遥拝。



来た尾根を東へ下り、15時、下から聞こえる渓流の響きを目指して谷に下ってゆきました。

水の少ない沢を下ってゆくと、下に滝が見えてきました。大シウド谷です。15時半に谷に着陸。



滝は、往路に山腹に取り付いた処の滝よりも大きく、少し上流であるようです。滝の下流にも滝が続いており、左岸の斜面をトラバースすると往路の自分の足跡を発見。跡を辿って無事に大シウド谷に戻りました。冷たい谷をジャブジャブと下ってゆき、ロープのある滝も無事クリア。



17時前に林道の橋に戻り、大シウド谷に向かってカウハセの宿本地・文殊菩薩ご真言をお唱えしました。

林道を下り始めると、雄シカに会いました。大シウド谷と尾上郷川の間の尾根にて別山に掌を合わせて少し進んだ処で、樹から黒い大きな生きものが地面に降りました。二本足で立ち、幹の後ろに回って私から「かくれんぼ」していました!クマさんに二度も出会うとは…幹の他にはクマさんと私の間には何もなく、立ち止まらずにそのまま下りました。先程と同じクマさんでしょう。もう少し早く下山していたら、林道で鉢合わせしていたかもしれません。往路、別山大権現、即ち聖観音さまにクマさんと私の両方の無事を祈りましたが、観音さまは両者に「無畏」を施して下さったようです。クマさんも私も山に生かされている兄弟、お互いに傷つけあったり、殺しあったりする必要など本来無いのです。

夕暮が近づいてきたので、上空にうろこ雲を見つつ足早に下山。



小シウド谷出合にて、小シウド谷最奥にある白山修験の行場、中州宿の本地・普賢菩薩、大日谷出合にて大日ヶ岳本地・大日如来のご真言をお唱えしました。小シウド谷の林道へ、イノシシの仔が二匹走ってゆきました。森の中はすでに暗く、18時すぎにヘッドランプを点灯して夜の尾上郷を行道。光る目でこちらを見つめていたのは、タヌキでした。19時半前に馬頭観音さまに掌を合わせて感謝。下流からぬるい風が吹き、上空は、満月は山に隠れて見えないものの明るく、うろこ雲が見えていました。



ランプを消しても尾上郷川が見え、無灯火で歩けなくはないくらいです。やがて前方に尾神橋を渡る車の灯が見え、ゲートの手前で20時、山の端に皓々と輝く満月を拝むことができました。



南無白山妙理大権現…。その大光明は、周りの雲を照らし、私を照らし、尾上郷のクマを照らし、生きとし生けるものを照らしていました。
関連記事

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

白山順禮写真館

Haxanjunrei

松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝