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仏像泥棒への警告

 12月27日のニュースで、美濃市・立花六角堂に祀られていた円空上人作護法神像が盗まれたことを知り、愕然としました。ご本尊のお地蔵さまは無事のようなので一安心ですが、脇侍の円空仏のみを狙ったのだとすれば、金銭目的の犯行でしょう。円空上人の彫った神仏の像を、ただの美術品・骨董品・民芸品としてしか見られぬ愚か者の犯罪は、止むことがありません。人知れずひっそりと祀られてきた仏像が「円空仏」のお墨付きを得たところで、信仰の対象としての仏さまの尊さは増えも減りもしないはずです。「円空仏」などという鑑定・お墨付きは、骨董屋や泥棒の役に立つばかりで、信仰の上では不要です。


(六角堂、2015年6月参拝時)
 「今時の人、仏を見れども心に法門なきは、みな仏にあらざるなり。」(「摩訶止観」)
仏像を見ても、自分の心に仏さまの教えへの門が開けていなければ、それは仏さまではありません。自分の汚い欲望の対象、金銭欲・名誉欲・淫欲の反映にすぎません。仏像とは仏さまの似姿・分身であり、仏像を手に入れたところで仏さまを手に入れることはできません。仏さまを念じる時(念仏)、同時に仏さまの教えを念じ(念法)、仏弟子を念じ(念僧)、悪念を捨て(念捨)、慚愧し(念戒)、人間の世界から地獄・餓鬼・畜生・修羅の世界に堕ちぬよう、天の世界を念じる(念天)。この六念の法門を忘れぬようにしたいものであります。
 仏像を盗むような人に仏教の教理を説いたところで馬の耳に念仏。そこで、仏像を盗んだらどうなるのか、犯人にも分かりやすく説明してあげましょう。
 立花六角堂は白山美濃馬場前宮・洲原神社のすぐ南にあり、ご本尊も泰澄大師作と伝わります。白山美濃馬場中宮・長瀧寺に伝わる「長瀧寺真鑑正編」に、天正13年(1585)、白山三所権現の一つ・別山の頂に祀られていた藤原秀衡公寄進の聖観音菩薩像を、飛騨白川郷の悪者が黄金と思い、盗んで鋳つぶしたことが書かれてあります。その為、越前大野郡主であった金森長近公が新たに聖観音菩薩像を奉納しましたが、同年11月29日に大地震が発生、白川郷の帰雲山が大崩壊して帰雲城は埋没、城主内ヶ島氏理、および郡上を追われ内ヶ島氏を頼っていた東常尭もろとも、滅亡してしまったのでした。長瀧寺の「荘厳講執事帳」には、白川郷・帰雲の他、「江州佐保山(佐和山?)・長浜、尾州河内、越州北荘(北ノ庄)・ツルガ(敦賀)、日本国中在々所々及滅亡候、前代未聞候」とあります。天正の大地震です。


(帰雲山大崩壊跡、2016年6月三方崩山より)
 白川郷には仏像を盗んだ者の名も伝えられており、知り合いの婆さんの悪知恵で、婆さんの腰巻きを仏像に被せて盗んだことになっています。その後、黄金を鋳つぶそうと七日七晩ふいごで吹いたものの溶けず、仏像を庄川に投げ込んだ途端、大地震が発生したとのこと。(「白川郷のむかし話」)。この伝承は加賀側にも伝わっており、飛騨の婆さんが七日七晩ふいごで吹いた観音さまは首だけがなくなり、白山加賀禅定道・桧新宮の屋根の葺き替えの時にその首が出現したとのことです。一時の楽しみの為に仏像を盗んだ者の汚名は、四百年以上たっても消えることはありません。本来、盗みと地震に因果関係がなくても、地震と関連づけられて無量無数の怨み・怒りの対象とされたのも、自業自得といえましょう。
 今回盗まれたのは護法神の像でした。円空上人は、髪を逆立て眼を怒らし、口元に微笑をたたえた護法神像を数多く彫っていますが、これらは護法神の似姿であって、本当の護法神とは目に見えずに働くものです。平安時代中期、浄蔵法師は護法神を侍者に、様々な霊験を発揮しています。法師が比叡山横川に籠って修行していた時は護法神が鐘を打ち花を供え、不浄人が裁縫した五条袈裟を檀主が施すと、護法神が瞋って口から火を吐き、焼いています。法師が比叡山金輪院で行法を修していた時、承仕するものがいなかったので護法神に香花を供えるよう命じると、香盒に忽ち火が点いたとのこと。法師が長谷寺で導師を勤めた際は、刀を持った男が乱入して堂内の人を切ろうとしましたが、法師が護法神に悪人を縛るよう命じると、男は柱に縛りつけられてしまいました。天暦4年(950)、八坂寺(法観寺)で結夏安居の際は、弓を持った強盗十余人が押入りましたが、法師が大声で護法神を呼ぶと、盗人たちは杖や鞭に打たれるように叫びながら庭に倒れ臥し、法師が護法神に声をかけるまで泣き叫んだとのことです。(「大法師浄蔵伝」)


(八坂寺(法観寺)、2016年10月参拝時)
 誰にも見つからずに護法神像を盗んだとしても、護法神はすべてを見ています。円空上人も、護法神を使役するくらい朝飯前でしょう(唯一残る円空上人の肖像画は、眼を怒らせ念誦を行じる凄まじい姿です)。私はともかく、多くの行者が犯人を呪詛し、調伏しようとしているかもしれません。早い内に己れの罪を自覚し、出頭した方が無難です。五百年、千年、億万年の苦しみから逃れたければ。
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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝