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白山妙理大権現

入り来たる風邪ウイルスもまた無常
窓辺に拝む遠きしら山


 私のねぐらの裏から、長良川の中洲の彼方に拝む白山は、まるで真っ白な彼岸の島、浄土のよう。左右に高賀の山並と大洞・三尾の山並を従え、左に別山(聖観音菩薩)、右に御前峰(十一面観音菩薩)、中央奥に大汝峰(阿弥陀如来)の三所権現は、そのまま阿弥陀三尊のお姿であります。
 平安時代後期、白山加賀馬場中宮・笥笠神宮寺の西因上人は、白山の本地仏として阿弥陀如来の像を祀り、「末法万年の間、弥陀の一教を遺す可」く、昼夜不断に念仏三昧を行じました。その願文に、
「若し白山の名を聞く善悪諸衆生、生死に流転せば、我即ち成仏せじ。若し此の善に結縁する遠近諸衆生、極楽に坐せずんば、我即ち往生せじ。我、普賢の行を修して無尽の世界に遍くし、諸衆生を引導して無上菩提を証せん者、伏して惟みれば、娑婆世界、極楽国土と浄穢異なりと雖も、機縁甚だ深し。其の中、我が日本国は、仏法他境より繁昌す。是を以て辺鄙下賤の人民たりと雖も、誰か見仏聞法の功徳無からん。定めて知る、浄刹に因有るの輩、斯の土に生まるること明らかなり。嗟乎、十悪五逆は風前の塵、妄想顛倒は空中の花。弥陀の白毫一たび照らさば、煩悩の黒業悉く除かれん。然れば則ち、誰か観音の金台に登らざらんや。なんぞ安養の宝池に詣でざらんや。若し一人も往生せざれば、我、誓って正覚を成ぜじ。況んや此の会結縁の輩、此の地促膝の人、今生には鎮に我が山の加護を蒙り、当来には必ず彼岸の覚位を証せん。」
とあります。(藤原敦光「白山上人縁記」、原漢文)
 西因上人は、自分の行を「普賢の行」と述べています。これは、「無量寿経」にある法蔵菩薩(阿弥陀如来)の四十八願中の、第二十二願にある「普賢之徳」であり、「華厳経」の中に繰り返し説かれている「普賢の行」に他なりません。それは、あらゆる仏国土(浄土)に身を現わして無量のみ仏に親近し、供養し、学び、修行し、生きとし生けるものを救う為あらゆる世界に様々の姿で示現して、しかも一つの国土・世界に執着しない、菩薩の大行であります。白山信仰・白山文化というと、おとぎ話めいた加持祈祷の霊験や、神仏の権威を楯に利を貪る荒くれ法師などが想起されますが、約九百年前に大願を発して念仏三昧を行じた西因上人や、約五百年前に焼身供養を行じた長瀧寺・敬愚比丘の仏心、即ち大慈悲心に基づく「行」こそ、白山信仰の宝であり、私たちが未来へと相続してゆくべき無上の遺産ではないでしょうか。
 普賢の行とは、また、法華の行でもあります。
「若し受持し読誦し正憶念し、其の義趣を解し説の如く修行することあらん、当に知るべし、是の人は普賢の行を行ずるなり。」(「法華経」普賢菩薩勧発品)
「是の法華経を修習せんと欲せば、三七日の中に於いて一心に精進すべし。三七日を満じ已らんに、我当に六牙の白象に乗って、無量の菩薩の而も自ら囲繞せると、一切衆生の見んと喜(ねが)う所の身を以て其の人の前に現じて、為に法を説いて示教利喜すべし。」(同)
「喜見の身を示すはこれ普賢色身三昧なり。」(「摩訶止観」)
普賢色身三昧とは、「観普賢経」に説かれる諸仏の普現色身三昧のことであり、「法華経」に説かれる薬王菩薩(一切衆生喜見菩薩)・妙音菩薩・観音菩薩の現一切色身三昧に他なりません。
 「法華経」薬王菩薩本事品には、もし女人がこの経典に順って修行するならば、安楽世界の阿弥陀仏の国に往生し、眼根清浄を得て無数の諸仏を見るであろう、と説かれ、「華厳経」寿命品には、「この娑婆世界の釈迦牟尼仏の国の一劫は安楽世界の阿弥陀仏の国の一日一夜に当る。」と説かれています。華厳・浄土・法華の行は、けっして別のものではなく、帰する処は一つです。西因上人と敬愚比丘に倣い、精進経行して一心念仏し、普賢の行を行じてまいりたく思います。元気な時は力の限り、病にあっては病に応じて白山妙理権現のお導きのままに。
 「無漏無染なるをこれを称して白となす」(「摩訶止観」)。「白」とは、一切皆空の清浄なる智慧です。「権現」とは、自在に喜見の身を示現する、普現色身の慈悲です。「妙理」とは、色即是空・空即是色、中道実相の妙理妙法です。アメリカで新政権が発足し、先行きの見通せない時勢となってきましたが、白き山との一対一の対話を通じて、己の進むべき道を歩んでまいる所存です。
「私たちにとっては、どの宗旨も救いの教義も、あらかじめ死んでおり無用であるように思われた。私たちがただ一つの義務として運命として感じていることは、私たちのめいめいがまったく自分自身になり、自分の中に働いている自然の芽ばえを完全に正しく遇し、その心にかなうように生き、不確実な未来がもたらすいっさいのものに対して、準備をしておくようにすることだった。」(ヘルマン・ヘッセ「デミアン」、高橋健二訳)


南無白山妙理大権現
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松樸裏

Author:松樸裏
自由と孤独を愛するアウトサイダーと、万物の母たる大自然との一対一の対話
2006~奥美濃の藪山を登り始める
2009~白山三禅定道を毎年登拝
2016~19白山美濃馬場の古の山伏の行場「白山鳩居峯」のうち五宿を毎月巡拝、以後随時巡拝