マダニフィストの再来~虫の知らせ
- 2020/10/19
- 09:38

俺の名はマダニフィスト、ある野人の気血を吸っている魔ダニだ。 奴は山に登る日取りを決めるのに、千七百年ほど前に書かれた「抱朴子」に倣って、忌日を避け佳日を選んでいる。無論、だからといってその日の天候や山の状態、そして奴の体調が好いとは限らねぇ。ここ数ヵ月は奴が選んだ日だけが雨天で、その前後は好天続きという結果が続いてるぜ。野人たる奴は、雨でも天候が回復傾向にあれば、人に会わなくて済むのでカッパ着...
マダニフィストの再来~無為・自然2
- 2020/10/05
- 20:05

俺の名はマダニフィスト、あるハゲちょびんのぬかミソに寄生している魔ダニだ。 前回ほざいておいたように、老子爺さんの道徳経五千言には「無為自然」なんて語はないし、「荘子」にもありゃしねぇ。前漢の司馬遷の「史記」(紀元前90年頃完成)にも晋の陳寿(233~297)の「三国志」にも葛洪(283~343)の「神仙伝」にも「無為自然」の語はないし、葛洪の「抱朴子」にも後漢の魏伯陽の「周易参同契」にも梁の陶弘景(456~536)の「真...
マダニフィストの再来~無為・自然1
- 2020/10/01
- 21:12

俺の名はマダニフィスト、ある野郎の心に寄生している魔ダニだ。奴はコロナで遠出できなかった四月と五月、老子爺さんの道徳経五千言を訳してすごしていた。老子爺さんや荘子オジさんの教えといやぁ、「無為自然」と知ったかぶりした奴らは宣(のたま)う。だがなぁ、老子道徳経五千言の中には「無為」や「自然」という語はあっても、「無為自然」なんて言葉はどっこにもありゃしねぇ。「荘子」にもそんな言葉はねぇし、老子爺さん...
マダニフィストの再来~鳩居峯
- 2020/09/23
- 21:23

俺の名はマダニフィスト、ある野人の心に寄生している魔ダニだ。十ヶ月近くもどこに隠れていたのかだって?それはこっちのセリフだぜ。なにしろCOVID-19とやらがアンタらの間で流行り出してからというもの、アンタらはめっきり山に来なくなったからな。 アンタが昔の白山美濃馬場の山伏の行場・鳩居峯のうち、五宿目まで徘徊したのも、十ヶ月ぶりだ。雪が深いだの、疫病だの、暑いだのとブーたれては山に来なかったり、来ても途...
マダニフィストの冬眠
- 2019/12/02
- 13:31

山は雪だ そろそろ冬籠りお前の心の 何処かでな生け捕りしようと しても無駄だぜ探し回っても 発見不可能仙人左慈は 魏の曹操に命狙われ 捕まったしかし牢屋の 内にも外にも左慈左慈左慈で 左慈だらけ行方くらました 左慈探し曹操怒って 指名手配左慈は片目で 青衣に頭巾すると町ぢゅうが 皆その格好お前が俺を 捜索しても俺はお前の 内外で無数の爛(ただ)れた スモモに化けてあっちで弾け こっちで弾けポンポン弾...
マダニフィストの手記6・不可軽入山
- 2019/11/11
- 06:18

俺の名はマダニフィスト、ある隠者の心に寄生している魔ダニだ。 アンタらはレジャーとか称して山にズカズカ入ってくるんで、アンタらの美味しい血がいただける俺らにとっちゃ有難ぇことだ。だが、俺らは元気なアンタらの新鮮な血が欲しいんだ。アンタらに山の中でくたばられたんじゃあタマらない。山に軽々しく入って命を落とすようなマネは、よしてくれ。 中国の葛洪って隠者が千七百年前に書いた「抱朴子」巻十七 登渉 に...
マダニフィストの手記5・気候変動
- 2019/10/13
- 11:40

俺の名はマダニフィスト。ある野郎の心に寄生している魔ダニだ。 古代中国の太上老君こと老子爺さんは、こう説いた。「人は地に法(のっと)り、地は天に法り、天は道に法り、道は自然に法る。」俺なら、「人は地に法り」の前にこう付け加えるだろう。「細菌はダニに法り、ダニは人に法り、」と。 太陽から放射された光線が地球に届くと、オゾン層で紫外線が吸収され、可視光線の約三割が大気や地表に反射し、残りの光線が地表を...
マダニフィストの手記4・蓼食う虫
- 2019/09/14
- 08:13

俺の名はマダニフィスト、ある男の心に寄生している魔ダニだ。「蓼(たで)食う虫も好き好き」っていわれる通り、生き物にはそれぞれの好みがあるもんだ。中国の古典「荘子」には、こうある。「ヒトは家畜を食べ、シカは草を食い、ムカデはヘビをうまいと思い、トンビやカラスはネズミを好む。この四者のうち誰が正しい味を知っているのだろうか。」たしかに、アンタらはブタやウシやニワトリを飼って喰い、奴らが豚コレラなどの伝...
マダニフィストの手記3・善悪
- 2019/08/13
- 14:14

俺の名はマダニフィスト。ある野郎の心に寄生している魔ダニだ。奴のしたことは善いことも悪いことも全部知ってるぜ、俺が奴を宿主にしてからのことはな。無論、善悪を判断するのは俺の役目じゃない。それは奴みずからが心に感じることだ。ただ、奴の心が細菌やらウイルスに染まっていれば俺も感染しちまう。そして、奴と別れて次の宿主に寄生したとき、それらを移すことになるのさ。 四世紀前半に中国で書かれた神仙思想の書「...
マダニフィストの手記2・昔話
- 2019/07/13
- 11:29

俺の名はマダニフィスト。ある男の心に寄生している魔ダニだ。少し昔話をしてやろう。俺らのことを新参者と思ってる奴もいるようだが、俺らのご先祖さまは恐竜の味も知ってるんだぜ。一億二千万年前に吸ったブラキオサウルスの味は、いまだに忘れられねぇな。あの頃のおめぇらは、ネズミみたいな奴だったっけ。 時代はずっと下って、インドでお釈迦さまの一つ前に現われた迦葉波仏の頃のことだ。何でも、その頃の人間の寿命は二...